イスラエル②ナザレ旧市街 マリアが受胎告知を受けた地

イスラエルといえばユダヤ教…と思いきや、ナザレの人口のほぼ7割はイスラム教徒、ほぼ3割はキリスト教徒。そしてナザレは世界中のキリスト教徒にとっての聖地のひとつ。というのもここは聖母マリアがイエスの誕生を大天使ガブリエルに告げられた場所で、イエスが伝道活動を始めるまでの約30年間、両親であるマリアとヨセフと暮らした場所。新約聖書に記された様々な出来事が起こった場所である。

朝4:30、遠くから響いてくるイスラム教の礼拝の時刻を告げるアザーンの呼び声で目覚める。のんびり準備をし、朝ごはん前に歩いて受胎告知教会に行くことに。

宿の扉を開けると、外では早起きの猫ちゃん兄弟が激しく遊んでいた。

な・・・なんや。。。
そ…そんな見つめるなやっ!

とぼとぼGoogleマップを頼りにしながら裏通りを歩いていく。石造りの建物の間だからか、GPSの精度が悪く、いまいちどこを歩いているのかわからなくなってきた。

しかめっつらでタブレットを見ていると、 車に乗ったおっちゃんにクラクションを鳴らされる。「すんません。。。」邪魔やったな…と思い、道の端に寄ると、再度ファンッファンッ!「どこに行くんや」と、おっちゃん。「受胎告知教会に行きたいんやけど」と、よしおちゃん。「ここまっすぐやでっ」と指さすおっちゃん。「ありがとう!」道を教えようとしてくれてたのね。

受胎告知教会の特徴的な屋根

おお!あの屋根が見えてきた! この不思議な屋根の形は、聖母マリアの象徴と言われる花、Madonna Lilly(ニワシロユリ)の形をもじったものやそうな。

受胎告知教会
受胎告知教会 Basilica of the Annunciation

この教会には、マリアが受胎告知を受けたと伝えられる「聖なる洞窟」があり、その洞窟を祭壇として祭るように建てられている。初めはローマ皇帝コンスタンティヌスが 4世紀に建物を建てるがその後イスラムの侵入により破壊、 十字軍の時代の1102年に再建など、破壊と再建を繰り返し、現在の建物は1969年建築。中近東で最大のキリスト教聖堂と言われている。「聖なる洞窟」はもとマリアのお家やったそうな。

建物を囲む壁には世界 各国から寄贈されたのマリアに関する壁画がたくさん並べられている。各国それぞれが思いを込めた描いたマリア像で、それぞれの風潮があり見ていて興味深い。

フィリピン
ブラジル
スロバキア
韓国

受胎告知の洞窟がある1階ではミサが行われていたのでしばし見学させていただき、先に2階へと進む。

受胎告知教会 上階
受胎告知教会 ユリの形の屋根を内から見上げる。

2階建ての建物、中は広々としており、今まで見てきた中でも珍しい建築物。 イタリア人のジオヴァンニ・ムツィオ氏による設計だそうだ。

受胎告知教会 上階

建物内の2階にも各国のマリア像があり、 その中でも目を引いたのは、 日本人画家、長谷川路可の作品をモザイクにした、「花の聖母子」だった。

「華の聖母子」

よく見ると、袖の部分は真珠がふんだんに使われている。

「華の聖母子」 着物の袖の部分の真珠

それぞれの想いがこめられたマリアの姿。世界各国からの祈りがここに集結しているのを感じる。

洞窟がある1階は、ゆっくり見学したい。なので一旦宿に戻り、まずは朝ごはんを頂くことに。まだ誰もいなかったので自分で準備をしようと思うが、コーヒーの器具があるものの淹れ方がさっぱりわからない。悩んでいると、すぐ宿の主人アマルさんが来て、朝食の準備をしてくれた。

この日は他に宿泊している3人連れのドイツ人家族がいた。父と兄弟の3人組で、レンタカーを借りてイスラエルを回っているそうな。車だと断然行ける場所が増えるよなあ。旅のリーダーは兄で、ヨルダンの大学で1年経済を学んでいたそうな。「大学以来、久しぶりにヨルダンに行けるのが楽しみ」とのこと。

朝ごはんを済ませて再度出かけようと思うが、窓の向こうにかわいい小天使たちの大家族が居て、どうにもとまらない。

覗いていたら近づいてきた
そのむこうには・・・
ニナちゃんと、お子たち

お母さんネコの名前はニナちゃんっていうんだそうな。こちらの国の猫ちゃんたちは、みんなフレンドリー。国民性なんだろうね!ずっと見ていたいけど、出かける時間だ。

ビワの実を食べる鳥さん

ナザレの5月初め朝の気温は、標高が高めだからか、日本より少し涼しく感じる。やたらと枇杷の実がなっている。美味しそう!

ナザレのもう一つの聖地は、宿がある坂を下りた広間の前。

聖ガブリエル教会 Greek Orthodox Church of the Annunciation

ギリシャ正教会によると、この教会から南に100m程進んだところ井戸があり、そこで大天使ガブリエルがマリアの前に初めて現れ受胎告知をした言われる。こちら聖ガブリエル教会(正教受胎告知教会)には、その井戸の水源がある。

聖ガブリエル教会内部

先ほど訪れた受胎告知教会とは雰囲気がまったく異なる。中は正教会らしいゴールドとブルーを基調とした厳かな雰囲気。

奥に進むと受胎告知のシーンが描かれた絵が飾られており、その下に井戸の水源がある。

水源は今も水が湧き出ている
聖水が汲めるタンク

たくさんの信者がここで汲める聖水を持ち帰っている。

聖ガブリエル教会の正面の広場を100m程南へ。ここが正教会では神から遣いとして送られた大天使ガブリエルが、マリアが天使と出会ったと言われる井戸。

マリアの井戸 Mary's Well

裏側に回ると、井戸の内部が見える。以前は井戸として機能していたそうだが、今は水が枯れている。

引き続き、早朝にも訪れた、もう一つのカトリックの受胎告知教会に戻る。

再び受胎告知教会へ

いよいよ受胎告知の洞窟に近づく。

左手に見えるのが洞窟
早朝はここでミサが行われていた

洞窟の上は吹き抜けとなっていて、穏やかな光が入ってくる。さらに近づいてみる。

マリアはこの洞窟に住んでおり、ここでマリアは大天使ガブリエルからイエスを宿っていると伝えられたとされる。こんなに近づくことができるなんて本当にありがたいことや。。。

マリアの井戸の水源がある聖ガブリエル教会も、こちら受胎告知教会と、それぞれ人々の祈りのパワーが集まったような、圧倒されるような空気を感じる。

受胎告知教会の隣には、聖ヨセフ教会がある。

聖ヨセフ教会 St.Joseph's Church

ここはマリアの夫、ヨセフが大工の仕事をしていたと言われている場所。今ある教会の建物は、1914年に建築されたものだが、この地下に、ビザンツ時代の礼拝所がある。

聖ヨセフ教会地下の礼拝所
階段の下は、床にモザイクがある洗礼用の水盤

受胎告知教会と、聖ヨセフ教会の間には、古代のナザレ村の遺跡も見ることができる。

あまりにゆっくり過ごしてしまった為、あっという間にお昼前に。マリア国際センターに行こうと思っていたが、12時から14:30まで閉館しているとのこと。でも「屋上の庭園は今入れるよ」と受付のお兄さん。お言葉に甘えて屋上へ。

この屋上からナザレの街が一望できる。

様々な植物が植えられているが、聖書に出てくる植物だそう。あまりに居心地がよく、こちらでものんびりしてしまった。帰ろうとすると、先ほどの受付のお兄さんがギターを持って上に上がってきた。

「ここで歌をうたうの?!」とよしおちゃん。

「今からミサがあるんで、そこで歌うんだ」と、隣接する教会を指さすお兄さん。

そうだったのか!お兄さん、働き者だなあ。。。。忙しいのにごめんやで。

お兄さんは元々フランス出身だそうで、このマリア国際センターのあたりはフランス人街なんだそうな。

お昼の休館中なので、ドアのロックを開けてもらい(ごめんやで)引き続き、ナザレの街を探索、市場スークに入る。

衣類、家電、金物、食料品など何でも揃う市場。見ているだけでも面白い。

ムスリム寺院のあたりから、礼拝の時間を知らせるアザーンが聞こえてきた。ムスリムの人たちは現在ラマダン中。ではあるものの、お昼の時間なので、何か食べようと、トリップアドバイザーで目星を付けていたレストランが近くにあったので入ることにする。

こちらのお店、名前は出さないが、ちょっとびっくりしたことがあった。まず店内は非常に個性的。建物自体相当歴史がありそうで、たくさんのアンティークの小物や雑貨が壁にぎっしりと展示されて博物館のよう。店内は撮影禁止と書かれていたが、お店のおっかなそうなご主人に尋ねると、料理の写真の撮影はOKとのこと。フムスとサラダを注文した。

ひよこ豆のディップ、フムス

味はというと、普通にフムスとしてうまかった。というか、美味しいフムスというのがどういうモノかわからん。

しばらくすると、大人4人、小さい子供4人、合計8人の家族連れが入ってきた。子供たちは順番ずつトイレに行き、その間、大人たちは何を食べるかメニューを見て決めていた。そして「子供たちはまだ小さいので、3皿注文して分けるから」と言うと、ここで突然店の主人がブチ切れた。

「8人で3皿とはどういうことやっ!」と、大声で怒鳴り出す店の主人。

「子供はまだ小さいから分けるんですっ」と、おかん。

「何、ふざけたこと言うてんねん。出ていけっ!」と、ご主人!

・・・。こえ~~っ・・・。キレるとこわからん・・・。

8人家族は怒って店を出た。オカンは最後に怒りながら、

"God bless you!"

と叫んで立ち去った。”God bless you!"が捨て台詞として使われる例を目の当たりにしながら、残りのフムスをモグモグ食す。

ちなみにこの店TripAdvisor で評価4.5。Certificate of Excellence (エクセレンス認証)2016 - 2018 の受賞者。Googleマップの口コミ4.4ね。

きっとこれもこの店のエンターテイメントなんだろう。。。

あ、その日の夜、あまりにもびっくりしたので、再度Googleマップの口コミを見ると、あの家族のカキコミと思われるコメントが恨みつらみを込めて書かれておった。

さて次は山の上に登ってみよかいな。小高い山の上には「青年イエスの教会」がある。不定休らしいが、ひとまず行ってみよう。その途中でイエスが弟子とともに食事をしたと言われているメンザクリスティもある。

スークから細い路地と階段をどんどん登っていく。

途中でメンザクリスティの前を通り過ぎる。

ナザレのメンザクリスティ

開いていないし、誰ともすれ違わない・・・。と思いきや、おしりに誰かがぶつかってきた。

元気なわんこさんでした。

引き続き階段の小道をひたすら上がっていくと車道に出てきた。上には青年イエスの教会があるはずだが・・・

青年イエスの教会に併設された学校の門

やはりこちらも開いておらず。。。

青年イエスの教会 Basilica of Jesus the Adolescent

まあ近くで建物は見れたので良いとしよう。。。

左手にタボル山の頭が見える

またここからは、大変見晴らしが良く、遠くに「イエスの変容」で知られるタボル山が見えたのが嬉しかった。

山頂の反対側には、モスクがあった。

Nebi Saeen Mosque

こちら側からも見晴らしの良い景色が見られる。

旧市街に戻り、再び迷路のようなスークを歩くと、シナゴーグ教会を見つける。

シナゴーグ教会 Synagogue Church
シナゴーグ教会の内部

シナゴーグと言えばユダヤ教なのだが、現在はギリシャカトリック教会。ここはイエスが、旧約聖書イザヤ書のメシア来臨について朗読し、イエス自身が主から遣わされたメシアと語った場所だそうだ。

ちょっと休憩甘いものを。と思い、目星をつけていたカフェに向かう。途中でスークの店主らしきお兄さんが、聞いてもないのに道を教えてくれる。とにかくこの辺の人はみんな聞いてもないのに道を教えてくれる。ありがとうな。

Almahdi Sweetsに到着。甘そうなお菓子がいっぱい。

これはイスラエルの名物のお菓子?

クナーファ

何やら焼きそばにも見えるお菓子を注文。こちらクナーファというお菓子で、綿状のパリパリした生地にはシロップがしみ込んでいて、その下にはとろけるチーズが隠れているという不思議な組み合わせ。シロップがじゅわーっと甘いんだけど、チーズの塩加減が絶妙でうまい!!!コーヒーもうまい。

この後、名残惜しかったので再び受胎告知教会を見治め、宿に向かう。なんだか落ち着く街だ。。。独立記念日、休日だからいつもより静かだったのかもしれない。

しかしここ、イスラエルやんな?!