冬のロシア⑧モスクワ綺麗過ぎて帰れないクレムリンと聖ワシリー聖堂

1月16日、真冬のロシア一人旅8日目、モスクワ2日目、 今日はゆっくり目に観光。救世主キリスト聖堂と、再びクレムリンで武器庫見学、聖ワシリー大聖堂、そして夜はグム百貨店のカフェテリアで食事という予定。


日本を出て1週間を過ぎ、昨日は寝台列車泊。結構寝られたと思っていたが、やっぱり部屋のベッドの方がよく眠れる。ってか、寝すぎてしもた。ウダウダのんびりしていたらもう11時前。

出かけようとブーツのヒモを結んでいると、5~6歳の男の子が走ってきて、私に抱き着いてきた。もう一人、お兄ちゃんと思われる男の子が追いかけてきたので、私にかくまってもらおうとしている様子。

このお子ちゃんたちは、お隣の部屋に泊まっている。夫婦と子供が二人。昨日ご主人が、旅行ではなく、シベリアから働きに来ていると話していた。季節柄モスクワだと色々仕事があるのかと思う。

遅くなってしまったが、テキトーにどこかで朝ごはんをと思いトボトボ歩いていると、どこからともなくパンのええニオイ。。。

嗅覚を働かせて、パン屋さんを発見する。

生地がサクサクのジャムのデニッシュ。ええバター使てはるわ。美味しい。。。コーヒーが90ルーブル、パンが60ルーブル、合計150ルーブル(2019年1月で約248円)。素晴らしい。


ちなみにお店の名前はПатиссон(パチッソン)。Магнолия(マグノリヤ)というスーパーの隣の小さなパン屋さん。メトロのアルバツカヤ駅から近い。

美味しいパンを食べて幸せな気分に浸りながら、ゴーゴリ並木通りという遊歩道を散策する。

なんじゃこりゃ。。。

生首たち

ミハイル・ショーロホフの像・・・て誰やねん。

ソビエト文学を代表する作家とのこと。。。代表作「静かなドン」・・・って漫サンのヤクザ漫画ちゃうん!あ、あれは「静かなるドン」か。。。

ショーロフ像 めっちゃすごい人
前衛的なウサギみたいなん

やがて大聖堂が見えてきた。

救世主ハリストス大聖堂、救世主キリスト大聖堂ともよばれるが、ハリストスとは、ロシア正教会におけるキリストのこと。

1812年の祖国戦争でナポレオンのロシア侵攻に対する戦勝記念、戦没者慰霊を目的として、44年もの歳月をかけ、高さ103メートル、当時のロシアで最大の建築物である大聖堂が1883年に完成した。

その後ロシア革命で、政権はソビエトにとって脅威であるロシア正教会に対し宗教弾圧を行う。新たなソ連政権の記念碑的建造物を建設しようとソビエト宮殿建設を計画し、その建設地にここ救世主ハリストス大聖堂を選ぶ。

1931年12月にスターリンの命令でこの地にあった救世主ハリストス大聖堂は爆破されてしまう。

救世主ハリストス大聖堂(救世主キリスト大聖堂)

その後ソビエト宮殿建設案は、独ソ戦の勃発で中断、中止となり、フルシチョフ時代の1960年から、この場所は屋外温水プールとなった。

1980年後半からのゴルバチョフ政権のペレストロイカの中、政権から正教会への姿勢は緩やかになり、その後ソ連崩壊を経て、1995年より大聖堂の再建が始まり、2000年に今の建物が完成した。

現在も高さ103メートル。全世界にある正教会の大聖堂中、最も高い建物である。

モスクワ川の橋から見た救世主ハリストス大聖堂

大聖堂の大通り側の反対側は、モスクワ川で、その向こうにクレムリンが見える。

カチンコチンのモスクワ川

クレムリンの反対側に見えるのは、ピョートル大帝の記念碑。1997年に完成したピョートル大帝の記念碑。ちなみにピョートル大帝はモスクワが嫌いでサンクトペテルブルクに遷都したそうだ。

右手のスターリン様式の建物は外務省

引き続き救世主ハリストス大聖堂からクレムリンへと向かう。

クレムリンに向かって左手には、ロシア国立図書館の美しい新古典主義建築物。

Dom Pashkova ロシア国立図書館

この美しい建築物があるクレムリンの南西側には、ボロヴィツキー広場、というか大きな交差点がある。ここは360度ロシアの英雄満載だった。

クレムリン左手に見える像は、ウラジーミル1世像。2016年に建てられた高さ17.5mの像。

ウラジーミル1世像

ウラジーミル1世はキエフ大公として、988年、キリスト教を国教として導入した聖人。カトリック教会でも聖人として崇敬されている。

クレムリンから道路を挟んで斜め向かいの小さなチャペルは、聖ニコライ、正教会ではミラ・リキヤの大主教奇蹟者聖ニコライのチャペル。聖ニコライ、もしくは聖ニコラオス、ミラのニコラオスは、ひそかに弱者を助ける話しが数多くあり、その伝承から、聖二コラオスが、実はサンタクロースなのだ説がある。

奇蹟者聖ニコライチャペル

そして奇蹟者聖ニコライチャペルの左手の建物の壁に絵が描かれているのが見られる。

左は、祖国の救世主ドミートリー・ポジャールスキー、右は国民的英雄クジマ・ミーニン。どちらも1611年から1612年、ポーランド・リトアニア共和国の侵攻によるロシア・ポーランド戦争で、ロシア軍を率いて、戦いをおさめた。

左: 公爵ドミトリー・ポジャルスキー 右: 商人クジマ・ミーニン

ちなみにこのお二方が、この写真の聖ワシリー大聖堂(ポクロフスキー大聖堂)の前の像のお二人。

決して「しばいたろか!」と言うてる訳やないのだ。

そしてポジャールスキーとミーニンの絵の建物の道を挟んで向かいは、やはり国民的英雄のミハイル・クトゥーゾフ公爵の絵。帝政ロシア時代、エカチェリーナ2世、パーヴェル1世、アレクサンドル1世の3代にわたって仕え、ナポレオン軍を撃退したロシア軍総司令官で、サンクトペテルブルクのカザン大聖堂に遺体が埋葬されている。

帝政ロシア時代の軍人 ミハイル・クトゥーゾフ公爵

そしてクトゥーゾフ公爵の奥の建物に描かれているのは、 ソビエト兵士の像。この像の実物は、ドイツ、ベルリンのトレプタワーパークにある。そこにはソビエト戦争メモリアルがあり、このソビエト兵士の像が建てられていうる。兵士が抱えているのは、敵軍ドイツの女の子。もう片方の手は剣を握っている。第二次世界大戦後、特にベルリンの戦いで亡くなった8万人のソヴィエト兵士たちへの追悼のための記念碑が建てられた。この像は、軍曹ニコライ・マスロフという人物で、ドイツの激しい砲火の中、命の危険を顧みず、母親がいなくなった3歳のドイツの少女を助けたという。その話しが銅像にされたのだ。

ドイツの少女を抱えるソビエト兵

引き続きクレムリンへ。

武器庫へはボロヴィツカヤ塔から入場する

クレムリン内の武器庫という名の博物館のチケットを買う。入場時間が決まってていて、私は14:30からの入場のチケットを購入した。

この武器庫は本来は武器庫として建てられたもので、その後博物館として、工芸美術品などが収められるようになった。

12世紀から19世紀にかけての金や銀の器、衣装、刺繍の装飾、宮廷馬具など、様々展示がされている。写真撮影は不可。あまりに見事な装飾品がたくさんある。あり過ぎて・・・わたしにゃ価値がようわからん。

と、さっさと見学を済ませてクレムリンの聖堂広場へと再び向かう。

通り道のこの庭園、アレクサンドロフスキー庭園というのだが、この名の由来である、ロマノフ朝第10代ロシア皇帝、在位1801年~1825年のアレクサンドル1世の像がたっている。アレクサンドル1世が治世中に、ロシアはフィンランドとポーランドを獲得している。

男前 アレクサンダー1世像 2014年に建てられた

そしてまた今日も来てしもた。聖堂広場。

聖堂広場

昨日は曇っていたのだが、今日は晴れ間もちらほらあって、また日の高さによって、建物の色や雰囲気が変わっていくのが面白くて、なかなかここから立ち去ることができない。

ウスペンスキー大聖堂
イワン大帝の鐘楼
ブラゴヴェシチェンスキー聖堂
アルハンゲルスキー大聖堂
大クレムリン宮殿
ヘリポート発見

こちらが元老院、以前レーニンはこの3階の狭い部屋で暮らしてはったそう。現在はロシア連邦大統領府として使われていて、大統領がクレムリンに居るときは、丸屋根に大統領旗が掲げられるとのこと。

お!!!居てはるん?!

元老院
イワン大帝の鐘楼に「帰らんといて」と言われている気が・・・
名残惜しい。。。
4時過ぎてしもた。

あまりに好きすぎて、入り浸ってしまった。。。引き続き、こちらも好き過ぎる赤の広場の、聖ワシリー大聖堂(ポクロフスキー大聖堂)の内部に潜入!

中は博物館になっていて国立歴史博物館の分館となる。

このポクロフスキー聖堂(ワシリー寺院)はモンゴル系カザン・ハン国との戦勝を記念し、イワン雷帝こと、イヴァン4世によって1560年に建てられた。

高さ46メートルの中央の主聖堂と、それを取り囲む8つの小聖堂、この一つ一つに至聖所がある。8という数字は生神女マリアの象徴である。

完成した聖堂が、あまりにも美し過ぎたので、イワン雷帝は、これより美しい建物が建てられることを恐れて、設計者二人の目を潰してしまったというとんでもない恐ろしい逸話があるが、実際のところ、この設計者はこの後も設計を続けていることから、本当の話しではないと言われている。こんだけ素晴らしい建築物を造ったのに、目ぇつぶされたらたまらんわな(涙)

このような美しい彩色が施されるようになったのは17世紀頃からのこと。

当初はポクロフスキー大聖堂(生神女庇護大聖堂)という名称であったが、イワン雷帝が崇敬する、佯狂者ワシリイを記憶する小聖堂が加えられ、聖ワシリイ大聖堂と呼ばれるようになった。

それぞれの教会にイコノスタスやイコン、フレスコ画などが見られ、あまりに美し過ぎてくらくらする。

イコノスタスなど小聖堂内の装飾がゴージャスさと対比的な、少し色褪せた通路のフレスコ画の美しさも見事。細部にもぬかりがない。

帰りたくないよう・・・。

外だけでなく、中もあまりに美し過ぎて、あっという間に閉館時間になっていた。冬季は17時までなのだ。

夢中になると我を忘れてしまう。そういえば朝から何も食べてなかったなあ。。。すぐそばのグム百貨店に入ると、アイスクリームを食べている人をたびたび見かけるので、私も買ってみた。外は寒いのだけど、建物の中は暖かいからアイスがおいしい。

食料品売り場を物色。

高級酒の中に、月桂冠発見。

実際お値段は高めだが、何しろ建物の雰囲気がゴージャスで何もかも高級そうに見える。

デザートが先になってしまったが、これから夕食。グム百貨店の上階にカフェテリア方式の食堂がある。セルフでショーケースから好きな料理を選んで、最後にお金を払う。種類が豊富で悩んでしまう。。。

悩みに悩んで、前菜はサーモンとクリームチーズ、ゆで卵にイクラのせ、キャベツのスープ、サーモンのつつみ焼きに、そばの実にきのこもクリームソース添え。ほんでビール。多分全部で1280ルーブル(約2120円)程度。素晴らしい。

キャベツのスープはスジ肉入りで、おでんの風味。 何気に健康食。

おなかいっぱい、そろそろ宿に帰らねば。

ああ、美し過ぎて帰りたくない。。。

マクドナルドまでゴージャスに見えるのだが。。。

21:30、帰り道、夜道を一人で歩く。どうしてみんなロシアは怖いって言うんやろう。百聞は一見に如かず。

ではまた明日!