仕事をリタイアして1年以上の長期間の旅に出かける人達の壮絶な人生

一人旅で様々な人に出会うことによって、普段知る術がないような話しを聞くことができ、この上ない学び方ができる。南米で出会ったイギリス人夫婦から、仕事を退職し一組は1年、もう一組は3年以上の旅行に出かけているという話しを伺った。

そのイギリス人夫妻二組と出会ったのは、ボリビアからチリへ砂漠地帯を2日間かけて4WDで抜けるツアーに参加した時だった。
ツアーには50代と60代の夫婦二組と独身女性が1名、この5人は古くからの友人同士だった。

その夫婦の一組は、55歳で仕事を早期退職し、その後夫婦で3年間かけて旅に出かけることを決め、イギリスを出発してから1年目だった。

もう一組は60歳で定年退職し、1年間かけて旅をしている夫婦。
現在イギリスを出て4か月目。

それぞれ旅をしていた5名がボリビアで待ち合わせて合流し、この4WDのツアーに参加。そこに私が合流したわけだ。

1年、または3年、旅をしながら生きていく生活。こんな興味をそそる話はない。

「一体どうやってそんな生活ができるのか?どうやってお金を賄っていくのか?」聞いてみた。

60代の夫婦はイギリスの自宅を人に貸して、その収益で旅をしていると言う。

南米は物価が安いので、イギリスの自宅の家賃収入で働かなくても旅をしながら生活できるのだそうだ。

旅の間、宿は前もって予約せず、街に到着してから宿を探す。
そして快適で値段が見合うところがあれば、そこに滞在すると。

1年以上の余裕がある旅なら、焦って宿を予約しておく必要もないわけだ。

「自宅を貸すならば、家にある自分たちの持ち物はどうするの?」と尋ねたところ、

「持ち物はすべて屋根裏に収納していて、鍵をかけてあるから大丈夫」とのこと。

この二人は南米を回ったあと、ニュージーランド、マレーシア、ネパールまで行き、現在はイギリスに帰っている。

そして55歳でリタイヤして3年間旅している夫婦は、南米の様々な地域にしばらく居を構えながら、英語の先生や、ボランティア活動などをしている。

そのハズバンドのデヴィッドさんはとても活動的で、沙漠の中にある大きな岩の上をひょいひょい登って、気付けば岩の上から景色を眺めていた。
結構高所恐怖症でバランス感覚のない私からすると、怖くて絶対無理。

ワイフのケリーさんは、心配そうにおろおろ見ていた。

その時は全く気付かなかったのだが、デヴィッドさんは、この1年前バイクの事故で、片足を膝から切断していた。

彼の左足は義足なのだ。

事故で足の切断手術を受けてわずか数か月で義足で歩けるようになり、水泳や自転車まで乗れるようになるまで回復。

そして事故から1年後にブラジル リオへの片道航空券を買い、ケリーと二人で南米に渡った。私が彼らと会ったのはその1年後のことだった。

私が彼らに出会ったとき、南米は寒く、デヴィッドはロングパンツをはいていたので全く気付かなかったのだ。

いや、あんな怖い崖のような岩に登っているほどなのに、その現実に気付くはずがない。

デヴィッドはその現実を受け入れ、真のポジティブ精神で、なんでもできるようになっていた。

表情はいつも明るく笑顔で、肌も艶やかで、誰よりも元気で人生を謳歌しているように見える。

ポジティブであれば、人は何でもできることを体現している人であった。

現在はデヴィッドとケリー夫妻は現在ヨーロッパに滞在中、今も夫婦でノマドな生活を続けている。

こんな人生の師匠に出会え、直接話しが聞けるのも、 普段出会えない人たちとつながることができる 一人旅、個人旅行のおかげである。